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短かった夏がいけば

ひさしぶりの機内から見る風景。そこには砂漠が広がっていました。今までとはまったく違った眺めに、あらためて地球のおもしろさを想う。カイロ国際空港が近づいてくると、そこにはいくつもの煙突が並んでいて。そこから吐き出される何本もの煙はさながら雲のように。本物の雲を下り、アフリカの朝日から生まれた新しい青空。青と白のミルフィーユ。街の間に砂があるというよりは、砂の間に街がある。しばらくは、視力のいい目を凝らしても動くものが何も認められない世界が。なんとなく「星の王子さま」のことを考えたりしました。雪国と同様に、ここで暮らす人たちはガッツがあるんだろうなと思ってしまう。僕には無理だな。 

飛行機のドアを出て、4時間ぶりの外の空気を吸う。びっくりしました、寒い。日本以来の北半球だから当たり前ですが、エジプトは冬です。ピラミッドと寒さを結びつけたことがなかったから、少し不思議な気分です。日本と比べたら大したことはないけど。こうして僕の短かった夏が終わりました。ケニアにいた3週間だけの、海も花火もデートもない2017年最初の夏。そしていきなり冬へ。おかげで季節感覚は取り戻せそうですが、小さなバックパックは寒さに弱い。服を買わなければならないかもしれない。 空路での入国はわりとラクチンで。調べていたよりもビザ代が高くて焦りましたが、入国審査場の手前にATMがあったから大丈夫。25ドルでシールを買って、自分でパスポートに貼ったら入国できる。6カ国目、エジプトのはじまり。スワヒリ語からアラビア語の世界へ。エジプトの国民性、噂ではがめついらしいけど、うまくやっていけるだろうか。なんて思っていたらロビーでいきなりタクシー引きの強引な勧誘にさらされて、自信は持てないな。身なりのいい、しっかりしてそうな人を選んでタクシーをお願いする。完全に勘頼みです。"They somehow know what you truly want to become."忘れられないジョブズさんの言ったこのフレーズ通りであってほしい。ちょっとずれるけど。直感よ、どうかよろしく。そして初の左ハンドル、右側通行の国に入りました。それもあってか日本車はだいぶ減ってしまった。乗ったのは日産で、それでも3割くらいはそうだけど。これがなかなか慣れなくて、世界がひっくり返ってしまったみたいです。すこし酔いました。バイクのライダーが一様にヘルメットを被っていないことに不安になりながら。カイロの中心までの道は恐ろしいくらい混んでる。隙間を縫って進んでいく運転にこっちはひやひや。客は急いでないけど、運転手がはやく降ろしたかったんだと思います。英語も通じなくてほとんど会話はなかったけど、タバコをくれました。辛抱しろということでしょうか。看板もアラビア語で書かれていて、読むことができない。読めたのはKFCとマックくらい。それでもどこへ言っても高い建物が続いている。建物の様式は他の国とはまったく違う。石っぽいものばかりです。西洋風なものもほとんど見かけない。高い尖塔を持ったモスクをいくつも過ぎる。緊張もするけど、違う文化に入っていくことに武者震いします。これはまた冒険だな。

結局1時間ほどでホテルに到着。無口だった運転手は最後に「チップはくれないの〜」とくねくねした声を出した。あ、はいはい。今までの国では、好意で払うことがあっても、そんなに頻繁にはありませんでした。計算が立ちやすかった。この距離で250ポンド(約1200円)だっから文句はない。出発の時にもチップは渡したんだけどね。 物価のさらにやすいエジプトでは、このホテルも1人部屋で1300円ほどです。4人のドミトリーは700円以下。非常に助かります。誰の目も気にせずに、とりあえずベッドでごろごろ。それが済むとお待ちかねシャワータイム。お湯ですよ、お湯。おそらく新年初の温かいシャワー。施設での生活、一番温かかったのは涙だったはずだ。水温調節が難しく、ものすごく熱いお湯に痛いくらいなんだけど笑顔が止まらない。「おまえーちょっとあちーよ、ばかー」。こんな思考を禁じ得ない。体を擦ると、これでもかってくらい垢が出てくる。垢太郎の話を思い出す。桃太郎とほとんど変わらないストーリー展開。それでも冒頭、おじいさんおばあさんが垢をこねて人を創り出す、なんとも汚いファンタジー。三太郎のcmのオファー来ないかな。あれまだ続いているのかな。人はいともたやすくよごれることを知りました。少し怒られてもいいくらい、心ゆくまで浴びて。こんなリフレッシュは近頃なかった。でもきっと三日後ぐらいには、そのありがたみも忘れてしまうと思う。そして次は湯船に浸かるのを夢想する。無い物ねだりも甚だしいけれど、そんなもんだよね。そして自信を持って言えること、今の僕は綺麗です。 

空港で食べた以来の食事に向かう。先述の通り看板は読めなくて、何がなんなのかよくわからないからマックへ。南アフリカ以来だ。メニュー英語あるのかなと恐る恐る入ると、さすがマックです。バッチリだ。マックチキンとチキンマックがあったり。もちろんポークはないのですが、メニューもほとんど変わらない。ビックマックを頼みました。開けてみると、間にバンズがなくてちょっと大きいハンバーガーでした。もしかしたら、俺の食べないうちに仕様が変わったのか。それともミスか。故意のいたずらか。ポテトとオレンジジュース。合わせて250円ほど。安い。ものすごく好きなわけでもないけど、馴染みのある味に安心できる。ハッピーセットのおもちゃがマリオでほっこり。隣に座るきれいなお姉さんににっこり。肌の色も今までとは変わり、日本人より少し暗い肌に、黒い髪。この地域の人が一番好きかもしれません。ブロンドでブルーアイズ。魅力的ではあるけど、違いが際立って違う生き物みたいに思ってしまう。多くの方はムスリムだから、一定の年齢になるとヒジャブで顔を隠してしまう。これはなんとももったいないと思うけど、その下に隠れている顔を想像するのも面白いかもしれない。目だけが出るようにしている女性もいて、ムスリムだったナイラが「あんなことは教義にない」と少し怒ったように言ったいたのを思い出す。ひとつの宗教も一概には言えず、むしろ微細に分かれている。こんなことは世界史で習って知ってるけど、せっかく同じものを信奉するなら仲良くしてくれればいいのにと無責任に思って。 

街には本当に多くの車と人。忙しく煩い街です。でもこの排気ガスにまみれた臭いが、ちょっと懐かしい。全く不快ではなくて、むしろ好きかもしれない。人間として生きる僕には、これが故郷。はじめていったベトナムでは、香料の臭いが空港にいてもするぐらいで。きっとどの国にも特有のものがあるんだろうと楽しみにしていたけど、あの地域が特別に強烈に発しているだけで、アフリカの臭いと言われても僕にはよくわかりません。下水道の整備が進んでなくて、汚水くさかったりはするけどね。

 誰にも見られないところに身をおいて。鍵を閉めてイヤホンで音量大きく音楽を聴く。弾けもしないのに、エアギターなんかして。でもこんな時間が生きていく上では必要ではないでしょうか。 明日からはこの全く新しい世界で闘っていこうと思います。