他の誰も知らないものを失った人は何も失っていない

エジプトで知り合った人がFacebookに書いていたアラビア語はたぶんこんな感じの意味で。いい言葉だと思ったのでタイトルに。下手をこきました。ペトラからアンマンに向かうバスにカメラや充電器の入ったバッグを置いてきた2月1日。何より痛いのは、たくさんの人との交流が詰まった一冊のノート。マギーの連絡先もそこに書いてある。思えばこれまでよくやってきました。親しい人は僕のひどい忘れ癖をよくご存知だと思います。iPhoneの電池が切れて、充電しようと思った到着から10時間、やっと気がつきました。いつかはやるだろうと思っていましたが、実際起きると自分に呆れます。褒められると直後に失敗する。そして特に楽しい気分の時は、僕の頭のネジは5、6本緩んでしまう。結果的に、不幸中の幸い、手元に戻った今となっては特に言うこともありません。本当についていました。親切な運転手がそれを保管していてくれた。昨日はそれを受け取るために1日使って、今日は宿で休息。取り戻せることは諦めていたのですが、ヨルダン人の優しさに温かい気持ちになって、反対に寒い気温に体調を崩す。そんなアンマン暮らし。


誕生日の翌日は早くもペトラを後にしアンマンへ。8時半発のバスにしっかり間に合った穏やかな気持ちで首都を目指しました。途中窓から見る景色がまさかの銀世界。雪を見ることなんて予想していなかったので、恐る恐る「ヨルダンて雪降るの」。周りの人は当たり前だと言わんばかりに頷く。雪の中ではやっていけないよと思いながら眠りについて、気がつくと雪とは無縁に思える景色が広がっていました。道路に沿って多少店がある程度で、あとは荒野と山。草木もほとんど見ることがありません。アカバからペトラへの夜道、明かりをたくさん見たのもあって、ヨルダンには建物がたくさんあるのかと思っていましたが、そうでもないようです。昼過ぎにはそれを降りて、タクシーで宿に。そういえばこの時にはバッグを持っていなかった。気温を調べてみると、最高気温6度の世界。もう外出することを諦めて、ロビーでゆっくり休息。そして先述の通り、スマホの充電が切れた夕方に初めて自分のしでかした失態に気がつく。とりあえず充電器はないかとフロントにいく。経緯を話すと「見つけてやるよ」え、本当に。それから受付のおじさんはすぐさま各所に電話をかけること10分。「ゆうた、見つけたぜ」。あまりの早さに半信半疑ながら、重ね重ねお礼を言う。翌日にバス停まで連れて行ってくれる約束をして、この日はぐっすり眠れました。


翌日の12時に車は出発。先に韓国人の2人を空港に送り届けた後に、バッグを探す旅の始まり。これが思いの外時間がかかって、帰った頃には日が暮れかけていました。途中おじさんの新車を見に行ったり、買い物に付き合ったり、挙句僕が旅行者であることをいいことに免税店で酒とタバコを購入。最終的にバッグも戻ってきたので文句は言えませんが、こんな1日を過ごすことは予想していなかった。近くの店で、念願のカップヌードルを見つけて購入。日本のものではありませんでしたが、おいしかった。しばらくはこれを3食でも食べられる。


ペトラあたりからか、また体調を崩してしまい。この日も車に乗っているのもつらいような状態でした。鼻水、頭痛にお腹の調子も悪い。昔のことのようですが、2週間前までケニアにいて蚊に刺されることもあったので、続くようだったら念のために病院へ行こうと思っています。寒い地域に来て、免疫も少し落ちているから、体に入っていたものが暴れ出しているのかもしれません。そうでなければと願いながら、今日からイスラエルに行く予定だったのを変更して、アンマンにもう2泊することにしました。動かなければ弱るばかりなので、昼間は室内より暖かい外へ出かけてマクドナルドを探す旅へ。無性にハンバーガーが食べたい。道を忘れたら戻れなくなるので、マーキングしながら進みたいような気分でした。行けど行けど閉まっている店だらけ。それが宗教的な理由からなのかどうかわかりませんが、ゴーストタウン、首都でありながら過疎化の進んだ街のようでした。


同じアラブ圏でも、エジプトよりは他所者には優しいところです。車のナンバーも、エジプトではアラビア語で読めなかったのが、こちらではローマ数字が使われている。昨日のドライブではマックやケンタッキー、バーガーキングなどもよく見かけました。今日はたどり着けなかったけど。旅行者はあまり見当たらないものの、外国人だからといって声をかけられるようなこともほとんどありません。坂の多いこの街は、神奈川県で育った僕には郷愁を起こさせます。エジプトでの安さに慣れてしまい、見るもの全てが高く見えますが、さらに物価の高いイスラエルが待っています。体調が戻れば、近くにある遺跡なども回りたいところですが、今は休息。


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こんな状態で言うのも何ですが、楽しんでいます。出発した時には、どんな気持ちになるだろうと思っていましたが、心の中に後悔するような気持ちは一切ありません。本当に決めてよかった。就活をしている友人に連絡すると色々考えることもありますが、自分で選んだ道だから。何かやりたいことがあるときはぜひ実現させてほしい。休学というのは少し大きい気もしますが、本当にやりたいことをできたら、そんなこと気になりません。僕にとっては知らないところに行くということに楽しさがあって。たくさんのものを自分の目で見たいと思って。これは日本にいても心がけ次第でできることですが、ここでは日本にあるものでも、違う形をとっていたりするのでより面白く感じます。見れば見るほど発見の連続で、すこしその目も鋭さを失ってきている感覚もありますが、もう一回調子を整えて、とにかくいろんなものを見て触れる。今しかできないことだから、ひとつでも多くのものを心に留めて。今の自分にとってはそれが答えであると思っています。その先には何が待っているのかな。


寒さは人をセンチメンタルにさせて。外出したい気持ちを萎えさせ、内にこもらせる。それでもまだ寒い。人肌が恋しくなって、スケべな妄想にうつつを抜かす。これだけ世界中どこにでもいける立場にありながら、わざわざ凍える場所にいくのはどうも馬鹿らしく思えてきました。先のことはわかりませんが、進路を大きく変更しようと思っています。当初のプランでは、ヨーロッパも南アメリカも寒い時期と重なるからそれを逆転させようかなんて。季節のことは全く考えていませんでした。大事です。見たかったものも、凍えながら見たら心から楽しめないかもしれないから。


幸いここはWi-Fiがしっかりしているので、音楽を聴いて英気を養っています。聴きたい音楽の変化が、心境を写す鏡の役割を果たす。今日は90年代のロックばかりです。そしてクレヨンしんちゃん