ちょっと泣いてもいいですか?(上・さよならタイランド)

前日はしゃぎすぎたのがたたって、起きるとすでに10時を回っている。この時間にはすでに暑いタイバンコクカオサン通りに向かう予定だったのですが、いまいち気持ちが上がらない。とりあえずご飯と翌日カンボジアへ向かうバスのチケットを求めて、宿を出たのは昼過ぎのこと。映画からの帰り道に見つけた「うま食堂」なる店が頭から離れず、足は自然と向かう。唐揚げ定食と昼間からのレモンサワー。どちらも口にすることを夢に見ていた二品。白米と味噌汁が付いていて、どれも7割ほど再現されていました。その感動もさることながら、レジの奥にあるテレビ、映っていたのはなんとNHKでした。そしてドラマの「火花」が放送されている。なんとなく見ていると、井の頭公園、出発までの2年間、自分が誰よりも座ったと自信を持って言えるベンチが出てくる。友達の弾くギターに合わせて歌ったベンチ、オール明けのテンションでスプレーで髪を染めたベンチ、日が昇るまで語り明かしたベンチ。そして次には大好きな珈琲屋。バックミュージックはここで何度も聴いた斉藤和義「空に星が綺麗」


"口笛吹いて歩こう 肩落としてる友よ

いろんなことがあるけど 空には星が綺麗

懐かしいあの公園にちょっと行ってみようか?

最近忘れてること なんか思い出すかも"


昔からこういう時に、大げさですが僕は人智の及ばないものの存在を感じます。偶然入った店、時間。それらが定められているかのように自分という人間に合致する。そんな瞬間が時々やってきます。そんな大きいことではなくとも、晴れた気分にさせてもらえる。そのあるものの存在を、僕は嬉しい出来事が起こった時は信じたくなる。悪いことの原因は自分の中に見つけられるから。おかげでいい気持ちにはなったものの、疲労感は取ることができない。カオサン通りにはいかないことにしました。もう1泊延長してトライしても良かったのですが、店から出てそのままバスターミナルに向かい、悩んだ結果、翌日早朝発のバスを予約しました。バンコクでは一番楽しみにしていた場所ではありましたが、不思議と「いいや」という気持ちになって。こういう漠然とした思いには救われてきたことが多いので、直感の言うことを聞くことにしました。後で後悔するかもしれませんが、考えてもしょうがないので。もうこの日はこればかり、あとは宿に帰ってゆっくり。最後のタイ料理を夕食に食べ翌日に備えました。


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翌朝は伝えていたにも関わらず宿のスタッフが起きてくれない。部屋の戸を叩いても一向に反応がない。そのせいで最初に渡したデポジットを返してもらえずモヤモヤした気分のまま後に。ギリギリまで待ったせいで、タクシーでないと間に合わない時間。バンコクの道路は朝から混んでいて高速を使ってもらう他ありませんでした。


東南アジアでは初めて、カンボジアへの入国はビザが必要になります。そうなるとやはり緊張感のある国境越え。たまたま席の隣が日本人の方でしたが、僕のルックスに非があるのか全く話しかけてもらえない。声をかけても、軽く返してもらえるばかり。しばらく続けると相手も慣れてきたようで、軽い会話をしました。他にも何組かグループがいて、東南アジアには本当にたくさん日本人がいます。時期も春休み、ほとんどが同年代の学生。このバスはありがたいことに、水、ジュース、缶コーヒー、お菓子、昼食が付いていました。今までなかったことなので感動もします。座席も居心地がよく、ゆったりと、それでも国境が近づくと緊張感。迷路のように分かりづらく、不安になりながら、他の日本人の方に教えてもらったように進むとそれが間違えだと気づいた相手が追いかけて、連れ戻してくれました。一旦話せば、どの国よりもやはり親切なのが日本人。お礼を言って、同い年の彼と出国を済ませる。僕以外はあらかじめビザを取得していたので途中で別れ、30ドル払ってビザを取得。顔写真などは必要でしたが、スムーズに事が運ぶ。国境を跨いですぐのところにあるショボいカジノの中にあるトイレで安心からくる小便を済ませる。しかしこの一見うまく行ったかに見えた国境を越えが後に悲劇を招くことになりました。


カンボジアに入ってからは何も問題はなく、バンコクと打って変わって田舎道を走っていく。シェムリアップに到着したのは夕方ごろ。バスは宿まで歩いて行けるところに止まって、両替をするとドルが渡されます。リエルという自国通貨はありながら、ほとんどドルが使われていました。穏やかな田舎町といった雰囲気の中、宿までの道。必要以上の安心感がある。あまりに緩むと後に控えるインドで痛い目にあいそうだと思いながら。宿に着くと1つ嬉しい事がありました。ラオスでのルアンパバーン、ナイトマーケットで会った同い年の人と再会。僕はタイを経由して、彼はベトナムを通って。同じ人に2度出会うのは初めてでとてもいいものでした。正直僕は言われるまで気がつかなくて、相手が僕の顔よりも髪をしっかり覚えてくれていた。そう、こんな時には便利です。他2人と連れ添って夕食を屋台に食べにいく。一食2ドル、ビール1ドルとなんとも経済的。このうちの1人が翌日ベンメリアに一緒に行く人を探していました。名前知らなかったその場所は「天空の城ラピュタ」のモデルになったとか、なってないとか。ジブリ好きとしては思ってもない提案にふたつ返事で「いく、起きれたら。」特に予定も立てていなかったので、喜ぶ相手以上にこちらの喜びの方が勝る。それに備えて眠りました。


二台のついたバイクでゴミ箱を回って、おそらくお金に換えられるものを探している。そんな姿をよく見かけました。大抵は大人の男性と小さい子供が1人付いています。恐らくは親子。そんなに大きなお金にはならないはずです。世間は温かい目は負けられないかもしれません。生きることの難しさは、生まれた国や家で大きく変わってしまう。そんな中で、他の子供よりも鋭い目つきをしているように見える、そんな子供たちが強く育ってほしい。もしかしたら5歳ほどにして、僕よりも強いところが少なからずあるかもしれない。観光が主産業のこの街で、旅行者たちは彼らの姿をどう見るのでしょうか。(続く)