読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ピンク・シティー

 西遊記よろしく、僕はインドを西へ進み続ける。これまでは誰しもが聞き覚えがあるような街を辿ってきました。自分としてもアグラまでは予め行くことは必然として決めてあった。その先になると選択肢は南北西へと広がっていたのですが、南はインド人にも暑いからよした方が良いと言われ続け断念。北へはその後に行くこととし、バラナシで出会った人が口を揃えてオススメしてくれた西の街へ。パキスタンとの国境付近、砂漠地域を目指して。ジョイプールは北へはデリーともそう遠くないところに位置しています。北部の中央。アグラから電車で5時間ほど。降り立った感想としては今までよりも栄えている印象。立体の線路を電車が走り、ある程度高さのある建物が並びます。


 遅い時間についたホステルは、ここでもドミトリーを予約してあったのですが、通されたのは物置のようになっている地下の部屋。ベッドメイキングもされておらず、他の3つのベッドにはマットレスすら置いてない。そのことからもわかるように、宿泊客は僕だけだったのでむしろありがたく思いました。ドミトリーは人がいなければ、ただ広いシングルです。安い値段なのに人の目を気にしなくていいのは嬉しいばかり。気にせずオナラもできるから。普段はもよおすと、音が立たないように必死です。出てしまった時は知らん顔。清潔感のある館内は、5階だて、ほとんどがシングルかダブルであるようでした。必要以上のスタッフも皆フレンドリーでよく助けてもらった。聞くと多くが自分たちの村から出てきていて、故郷の方が好きだけど仕事がないからとここで働いているそうです。いいタクシーの運転手の見分け方なども伝授してもらいました。若いドライバーは平気で倍以上の価格を要求してくるからやめた方がいい。屋上にあるレストランは街の様子が一望でき、一度どう食べたらいいか人生で1番悩んだサンドイッチと遭遇しましたが、味もおいしく心地の良い滞在でした。特に2日目に食べた、メニューにないけどお願いして作ってもらったカレーライスは久しぶりの肉入りだったこともあり、だいぶ汚い食べ方をしてしまいました。ここにも2泊。バラナシを離れてからは、残りの時間もあってハイペースジャーニーです。


 ジャイプールはそれほど見所の多い場所ではないとは思います。それでいて都市としての規模が大きく、周るのは難しい。これはアグラから、城跡があるのは当然のことなので、わざわざ入場しようとも思いません。そして完全復活です。2日目は1日かけて、20km以上も歩きました。頭の中でブルーハーツが流れるくらい、これはもう元どおり。昼ごろから、もうびっくりするくらい暑いのですが、意を決して出かけて行く。当然といったら失礼ですが、道はやはり汚くて。露骨なので、この汚さをディープと呼ぶことにします。どこにいっても見かける、不法投棄のゴミが大量に集まっているようなところを見ると、現実として受け止めなければならないことですが、悲しく、シャッターを押す気は湧きません。交通量も多く、時には渡らなければならないけれど、渡れないような事もあります。響き渡る、煩わしく、耐えられないほどのクラクション。これをシンフォニーと呼ぶことにします。それらと内面は激しく闘いながら、道程をこなしていきます。他の国では人柄がイメージを作る上で大切な役割を果たしますが、インドでは人とともに、街全体に行き届いた混沌さに圧倒されます。正直言ってかなり疲れるし、お世辞にもいい環境とは思いません。その中でも持つパワーがあるのか、それともこんな中でやっている自分の中にパワーを感じるのか。後者かもしれません。なんだか生き生きとした気持ちになるのが不思議です。


f:id:GB_Huckleberry:20170329163729j:plain


 ここの1番の売りであろうもの。通称ピンクシティーと呼ばれるこの街は、中心部に行くと古い町並みに、同じ色をした建物が無数に並んでいます。実際に見ると、ピンクと言うのはどうだかな。橙色といった方が正確です。ただどんな色であろうと、統一感に対して、人は感動や感心を覚えます。細かい実用的な品々が売られる店が軒を連ね、観光地というよりは生活の色が濃い。その中にも名所があります。宿で確認した中で目を取られたハワ・マハル。そんなピンクシティーの真ん中に位置しています。この街では久しぶりに国際学生証が威力を発揮。インドの学生が最安、その次にインド人旅行者を差し置いて、海外の学生が続きます。これは今までなかったことで、ただただありがたい。一般の外国人旅行者はかなりお高くなっている中、かなり得した気分。インド人は本当に周りの人間に気を使うようなところがほとんどありません。何かに並ぶ事も苦手ならば、通路を塞ぐような事も平気でやってきます。狭い順路の続くこの場所で、能力は遺憾無く発揮されていました。気にしなければいいのですが、どうも切り離すことができない。外観が有名なので、中には入らなくても良かったかなというのが正直なところです。綺麗なところではありました。ただ四角が並べられたばかり、細かい細工のものではありませんが、ステンドグラスで飾られた回廊がありました。どんな質でも、"ステンドグラス=美"という単純な美的感覚が僕の中にはあります。惹きつけられるワードの1つです。てっぺんまで登ることができ、そこから見える街と、高台に聳える城跡の姿は、味のある風景でした。


f:id:GB_Huckleberry:20170329163953j:plain


 王宮跡と博物館にも向かったのですが、入口で入場料の高さに断念せざるを得ませんでした。かなり整然と区画整理されている中心部を建物を見ながらゆっくり、そして休み休み歩いていきました。途中で昼食を。中華料理なのか、チョーメンと呼ばれる麺料理があって、焼きそばのような具材と味のこの料理をインドではよく食べています。この日もいただいて、とても好きな訳ではありませんが、麺が食べたくなります。そうなると他にはチョイスがないんです。先ほども述べたようにステンドグラス。それが珍しくヒンドゥー寺院に使われているということでBirla Mandirというお寺に行きました。白を基調に、教会のようなルックスのところでしたが、散々見てきたヒンドゥーの神々もステンドグラスとなると違う趣きがありました。というよりも、この寺院自体が他とは一線画した異端のような存在に映りました。同じように境内に置かれていた白くテカテカの神像は、どうも祈るような気持ちにはなれなく、安っぽい。物珍しさで観光客も多くきますが、厳かに祈るような人はいませんでした。


 日も暮れはじめ、もうかなりの距離をこなしていたので、疲労感もあり、歩くかトゥクトゥクか悩みました。無理だと思ったら頼もうと、とりあえず宿まで徒歩を選択。なんてことのない、もう2度と通ることがないだろう道ばかりを少しずつ後ろに送っていく。何の変哲もなく、特に変わった特徴もない。でもやっぱり富裕な人達が目につきます。乗馬場や大学など、かなり綺麗な身なりをした人たちをたくさん見ました。先程までいた旧市街とは、まるっきり別世界です。道は綺麗に舗装され、牛もほとんど見かけない。日本人というだけで、子供たちを中心に大人もよく声をかけてきます。適当に返事をして行き過ぎる。ちょうど直線の道路の先に夕陽が輝いて、脇に並んだ果物の屋台との風景が穏な空気を演出してくれました。郷愁の中に、明日への希望も渡してくれる。


"聞こえる街のシンフォニー

とまどいながらも歩いてゆける

心の鐘鳴らして

相変わらずさ俺は

ゆくりなく吹く風とともに

鳴らし続けるぜ

俺の心の中のシンフォニー"

エレファントカシマシ「大地のシンフォニー」より


 音楽を聴いていたら、何だか楽しくなって結局最後まで踏破。いつもは行くだけ行って、帰りは甘えることがしばしばですが、この日は何だか体力をつけておきたかった。そのことを伝えると宿のスタッフは「見た目は弱そうだけど、芯は強いんだな」褒めてないよ?確かにますます細くなる上半身に筋肉が欲しい。そんなことを最近はインドで考えています。シックスパック。人生で1度はなってみたいものです。そんな気持ちとは裏腹、ご褒美にビールを飲んで気持ち良い就寝。


 翌日は昼前の電車に乗って、足早に次なる街へ。今度はピンクシティーではなく、ブルーシティ。砂漠への入口の街、ジョードプルから。何とも名前がややこしい。