ねこさん、どこかへ連れてって

お雑煮を食べることもできない元旦、朝から散歩に出かけました。地元の人はさすがに祝い事を取り行っているのか、道にはほとんど人の姿がなく、多くの店が閉まっていました。昼前から3人で歩いて30分ほどの近代的なスーパーに行った帰り道。他の2人は先に去ったので1人で歩いていると、警官に呼び止められました。綺麗な制服とパトカーを備えた彼におずおず近づく。油断からパスポートを宿に置いてきてしまっていたのが失敗でした。何を言われるのかと思えば「逮捕する」え?「この字が見えないのか警察だぞ」まあそうでしょう。「お前を拘留する」もう訳がわかりませんでした。そして「いくら持っているんだ?」2000円と答えると「足りない、俺たちは3人だ」そういうことか。ここケニアの腐った警察事情を目の当たりした僕は、無言でその場を離れました。大きな声で「日本人」と呼ばれましたが追いかけられるようなことはなく事なきを得る。この時はっきりと自分は将来この国で生活しないことを誓いました。こんな警官がはびこる国で、困ったら誰を頼ればいいのでしょうか?同時にこれまでお世話になった(悪いことはしていません)日本の警察の素晴らしさを思うのでした。帰ったら自転車の防犯登録確認にも笑顔で応じよう。


そしてボランティアが始まる月曜日まで滞在するボランティアハウスには15人以上の人が宿泊していました。2日に説明を受けたのち、各々のホームステイ先に別れていきます。ボランティアの紹介会社を選ぶ時に僕には2つの選択肢がありました。日本の会社にするか、海外の会社にするか。日本のものは数も少ないし、文化の根付いた海外のものの方が選択肢もたくさんありました。言語への不安はありつつも、挑戦、勉強も兼ねてと後者に決意しました。まずは登録フォームを埋めることに一苦労。案の定、同じタイミングでの参加者は僕以外英語のネイティヴスピーカーでした。英語を母国語にしたアメリカ人、イギリス人、オーストラリア人、カナダ人に囲まれて。そんな厳しい状況の中、これまで「若い」と言われるような年配の人々に国籍を越えて面倒を見てもらっていたことを痛感しました。同年代の彼らの輪の中に入るには自分から意思表示をする必要があります。盛り上がった共用スペースを通り過ぎて庭に出る。そこで気持ちよさそうに昼寝する猫が、むっくり起き上がり「着いてきな」と日本語で話しかけてくれたらどんなにいいか。そんな幻想に浸りました。危険思想。改めて僕は英語を話すのが苦手です。一対一なら苦労しながら、大勢だとほとんど無口になることしかできません。途中出会ったイスラエル人やサウジアラビア人が外国語として流暢な英語を話すのを聞くと、環境ばかりを言い訳にすることができなくなります。こういう場面に出くわすともっと勉強をするべきだったと反省する。綺麗な白人の女性を前にした時も同様に。まあいいかと思う日もあります。英語を話さなくても生きていける国に住んでいるから。ただ生活するだけなら今の英語力でなんとかやっていけます。この日は英単語のアプリを開いて、微力ながら今の能力に抗おうとするのでした。帰った後に話す英語を聴いて、結局僕がどういう決断をしたか確かめてください。見事なジャパングリッシュを話した時には、こいつはマイウェイを突き通したんだなと。中途半端になるのは嫌なので、早い段階で決めたらと思います。そのうち英語が全く通じない国に突入するのですが。


日本語話者が15人に英語話者が1人いたとしたら、僕が真っ先にその1人のもとに向かうことはないでしょう。転校生の場合も、最初に話しかけに行くのは分け隔てがないことでクラスの人気者の女の子がほとんどのように。ここにもそんな気にかけてくれる優しい人たちもいて、救われます。きっかけを得て、夕食のために卓を囲み豆をさやから取り出す作業に没頭する。彼らも外国語で話す大変さをよく理解してくれます。本当に子供の時に新しいコミュニティに参加したのと同じ気持ちです。久しぶりの感情に新鮮さもある。話は変わって、これだけの人がいる中でオーストラリア人の女性に次いで2番目に小さいおしりをしている自負があります。どうでもいいことです。


夜遅く、門限を過ぎても帰ってこない同部屋のウェルが心配になりオーナーに話しました。午前中に一緒にショッピングセンターまで行き、そこで別れ、その後中心街に行くと言っていた彼。パスポートも携帯も部屋にあったので一同安否を心配しました。そこでオーナーが話したこと。年末年始は警備が厳しくなり「パスポートを持ってない旅行者は逮捕される。先日も参加者の中国人の女の子が拘留された。もしかしたら彼も同じ目に遭っているかもしれない。」気がつきました。僕は本当に逮捕される直前にいたこと。もしその場を離れなければ確実に警察署に連れていかれていたようです。自分も昼に警官に出くわし、逃げたことを告げる。意図的にではないものの、英語で話した内容で1番ウケました。体を張ったギャグの威力は万国共通ということでしょうか。それが嬉しくて追加でかましたボケにはピクリともされない。まだまだ未熟者。何もなかったから良かったけれど、下手したら正月早々に人生初の逮捕を経験するところでした。想像すると決して笑顔は生まれません。その後、心配をよそにウェルはひょっこりと帰ってきて一件落着。誰よりも危なかったのはこの僕でした。


今までは1週間以上、海外に滞在したことがありませんでした。短い期間だと保てる緊張感も、日々が重なると弱くなります。今回のことを教訓にもう一度気を引き締めます。


小学生の頃、名前は忘れましたが「いつ?、どこで?、誰が?、誰と?、何をした?」っていうのをそれぞれ紙に書いて、ランダムに繋げ合わせるゲームしませんでしたか?あれ好きだったな。大学生のボキャブラリーがあればより楽しめるような、そうでもないような。帰ったら誰かつきあってください。


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