ブルー・シティー

 ジャイプールからジョードプル。ピンクから青。より西へ進んだ僕は、夕方ごろに宿に到着。インドのホステルには、よく壁に旅行者が落書きをしてあります。宿側も公認で、様々な言語、国籍の人たちにより時にはクサイ人生訓が、時には面白くもないオラオラしたメッセージが壁一面に広がっています。僕は未だに気が向かず、書いたことがありません。何か思いついたら1箇所くらい挑戦したいのですが、納得できるもの以外、そんなおおっぴらに残すのは恥ずかしく許せないタチなので、閃き待ちです。結局寒いものしか残せない気がします。日本語のものもいくつかあって、あぐらの宿には受付に近いところに大きな文字で「この宿 ヤッベーゾ」と書いてありました。オーナーが読めないからと堂々と、束の間の人気芸人にあやかって、到着した直後に見る方の気持ちにもなってほしい。確かにここでは不快な滞在をしましたが。そして今回の宿には大きく「インドで最高の宿」と書かれていました。それを見ただけで安心に包まれる。確かに2泊、快適に過ごすことができました。


 ジョードプルはインドの中で、お気に入りです。メヘランガル城を中心に特有の歴史を持っています。そしてブルーシティの名の通り、この街は多くの建物がはっきりとした青色に染められています。起源はシロアリ駆除の薬が日光で変色したことが始まりなど諸説、定かではありませんが、モロッコにある有名なブルーシティ同様、この街もしっかりと特殊な世界を創り出しています。


 健康的な7時頃の目覚めに、猛暑に襲われる前にと早めに準備を済ませる。宿をでて、まずははじまりのチャイ。そんな気は無かったのですが、売っていたおじさんの笑顔が素敵で引き寄せられてしまいました。しばらく歩いた道端の屋台で名前も知らない朝食を摂る。そこからはしばらくまっすぐ歩いていく。城跡は宿から既に見えているのだけど、なかなか近づくことが出来ない。ブルーシティも旧市街に入ってからがはじまりなため、しばらくはただ行為に集中する。早起きも否定されるくらい、この日も暑いのなんの。近頃は毎日1リットルの水を3本ずつ消費しています。もうこれがないとやってられないので。古い街並みへの入口の門をくぐり、あたりにはチラホラ青く塗られた家が現れはじめる。細くて狭い、地図にもない道を勘だけを頼りに、もう迷いながら。高い方を目指していくと、どうやらお城への道に入れたみたい。ここで同じく観光にやってきたインド人3人組と出会い、ヒイヒイ言いながら急な坂道を一緒に登っていく。正直彼らの英語はほとんどわからず、適当な相槌、そんなことはお構いなく。


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 外国人専用の受付、ここでも学生証が役に立つ。この施設のすごいところは、外国人は無料で音声案内を借りられるところ。タージ・マハルでも無かったことです。それになんと日本語にも対応している。聴き始めると、多少のカタコトへの期待も外れ、綺麗で聞き取りやすい男性の声でしっかりと説明がされる。メヘランガル城。ラージプート族の名前は、世界史を習った方なら覚えていると思います。彼らの拠点としたのが、この地域とお城でした。無数の国家の集合体だったムガル帝国の中でも、皇帝が最も繋がりを重視した豪族。実際にラージプート家の女性を娶った皇帝もいました。今も続くその一族が、ここを解放し、所有している数々の貴重な品を公開しています。最初はインド人3人組と共に回っていましたが、1つ1つの展示品の前で写真を撮る、巻き込んでくる彼らに嫌気がさして、途中から距離をとるようにしました。王族が実際に使用した様々で、豪華絢爛な品々。それらのコレクションもさることながら、この城一体が要塞としての機能、芸術作品としての機能を遺憾無く発揮しています。特に後者の趣向を凝らした装飾、それぞれの空間が役割を持った造りは、それだけで訪れる価値のあるものです。音声ガイドもあり、当時の生活を眼に浮かぶようによくわかりました。時代背景として元々持つ文化とイスラーム、そして進出してきた西洋の文化まで垣間見ることができます。建物としてこれだけ完成されていると感じた場所は他にありませんでした。頂上から眺めるといかに青い建物が広がっているのかがよくわかります。昼食にサンドイッチと、全く冷えていない真っ赤な、一体なんだろうというドリンクを飲んで、午後のはじまり。


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 それを終えると次にはひたすらにブルーシティー散策。地図も見ずに、ただいい眺めを探す旅。複雑に入り組んだ道を、行き交う人たちに尋ねながら、奥へ奥へと進んでいく。途中で池のようなところに出て、休みました。ガンジス川にはあれだけ人がいたのに、ここには誰1人いない。近くには猿たちが休み、水中に群れるたくさんの魚。波紋を残しながら進む鳥。なんだかいい場所で、歩いた甲斐を見つける。また歩き出し、正確な位置は自分もわかっていませんが、ほとんどの建物が綺麗に染められた一画を見つけ写真を撮る。雲ひとつない晴れ渡った空と、先日のピンクシティーが対照をなしたのに対して、親密に絡み合うようでした。満足がいったところで、宿に帰ろうとなるわけですが、間の抜けたことに、ちょうど1番暑い時間と被る。本当は30分ほどの道のりを何度も間違え、その度疲れ。結局1時間くらいかけて帰りました。途中、視界の中心に黒い斑点が流れていく、明らかに熱中症への階段を登りながら。屋台で一気飲みしたビンのマウンテンデューが美味しかった。世界のどこにでも手に入る飲料の1つです。しばらく休憩したのち、夕食へ。スパゲティが食べたくて、看板にそれらしき写真が載っていたので入った店。結局あったのはまたもチョーメンでした。翌朝は5時26分発の電車で次の街に移動することになっていたので、準備だけはしっかり済ませて。眠ろうとするけど、なかなか寝付けない。


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 そんな時に友人から連絡があって、なんと自分も世界を旅することにしたという知らせでした。前にも電話で話したり、ブログを読んでくれたりして、本人はきっかけをもらったと言ってくれました。もちろんたくさんの要因があって、本人が悩んで決めたことでしょうが、仮に少しでも人の背中を押すことができたのなら、とても嬉しい。そしてこれを書いていて良かったと思わせてもらいました。出発前のことを質問される中で、自分が元々抱いていた気持ちと、当時の感情を思い返すことができて、改めて自分も進んでいかなきゃいけないと。また、近しい友人が実際にそういう決断をする側にいたことが初めてだったので、他人事のようにすごい、勇気があると感心する。ただ楽しい、安全ばかりではいられない時もあるから、しっかりと身を守ってほしい、心配でもあります。こうして、出発から4ヶ月が経ち、それなりの日数が重なり、鈍ってきたところもあるのは事実です。でもまだまだ見たいものはたくさんあるからね、さあしっかりやっていこう。うざいインド人なんかに負けてられない。暑い気候に耐えるのは、うん、頑張ろう。自信ないや。たまには意地かなんかも見せなくちゃ。


そして砂漠の入口と言われるジョードプルから、次の街は砂漠のオアシス都市です。これまでスルーしてきた多くの砂漠、目の前に待つ新しい体験に、またワクワク。これはもう青春です。