SUSHIのチカラ

ヴィクトリアフォールズと次なる国、ザンビアリヴィングストンは国境をまたいで隣街。宿から10分ほどで入国審査場に到着します。実は昨日カメラをトイレに落とすという失態を演じた僕の気持ちは晴れない。天気も朝から初めての雨でした。10時に2日間滞在したホステルをチェックアウトしザンビアへ。前回のトラウマがあった僕は身構えて向かったわけですが、ビザ代50ドルを払うと何も言われることもなくスムーズに入国できました。入国審査場にいる人は公的な立場だろうと寄ってくる人に気を許してしまったのことが誤り。自分でもできることを世話焼いてくるザンビア人に道案内やタクシーを手配しただろとお金を取られました。カメラと相まって気分はモヤモヤグルグル。もしザンビアに陸路で入国することがあれば、赤い眼鏡をかけた陽気な男にご用心を。


旅をしていて思ったこと。1週間に満たない各国での滞在では、道中出会った数少ない人々によってその国のイメージが形成されます。それが決して正しいとは思いませんが、図らずもそうなってしまいます。ジンバブエでは出会った人々がとても親切にしてくれたおかげで、ヴィクトリアフォールズでのしつこいキャッチセールスを差し引いてもかなりいいイメージを抱いたまま離れることができました。ザンビアでのファーストコンタクトはこの赤メガネだったので、これから自分の中で改善されることを願うばかりです。裏を返せば、日本で出会う外国人旅行者も話す機会を持った数人の日本人によってJapanのイメージを築くのかもしれません。そう思うと責任重大です。声をかけられたら拙い英語だっていい、とりあえず可能な限り親切にするのが無難な対応です。そんな小さな積み重ねが、回り回って日本への旅行者を増やすかもしれません。遠いってのはなんとも頭の痛い悩みですが。


こうして3カ国目、ザンビアに到着しました。イギリス連邦に加盟しているこの国は、最貧国という位置付けにあります。ここリヴィングストンは観光地なので店などは十分にありますが、これからどんな光景を見るでしょうか。ビクトリアの滝は先ほどまでいたジンバブエザンビア、両方から観光することができます。どちらの国の人にもオススメのスポットを尋ねると「ビクトリアの滝」という返事が返ってくるのがおもしろい。自分の国から見た方が綺麗だと主張してきたり、陸続きだからこそなせる技です。不思議に感じるのは島国に住んでいる僕だけなのかもしれません。


昼前に宿につき、晴れない心のやり場を探します。こんな時は食べることが一番です。街をあてもなくさまよう。ここでもインフレ札を見せてくる人たちが寄ってきて「もうお腹いっぱい」と咄嗟に日本語。それらを振り切り道路沿いに歩いていると、20代くらいの男性が話しかけてくれて近くのお店を教えてくれました。ザンビアの人も前の国同様、基本的にはフレンドリーで親切にしてくれます。彼がオススメという魚介料理のお店に入り、メニューを見て目に飛び込んできたのはSUSHIの文字。これまでの国ではどこでも必ず寿司屋を見かけます。日本のそれとは全く違った雰囲気ですが、今や誇るべき日本の食文化。その代表格SUSHI。旅の途中に出会った中で好きな食べ物は寿司だよと言っている人がいて少し嬉しかったのを覚えています。彼は言いました"Best food ever"これはすごいことだと思います。


数々見かけながらも、アフリカに来て寿司を食べる気などなく、味も信用できないと思っていた僕は今までスルーしてきました。しかしうまい食事と幸せを求めていた僕は禁断の果実に手を伸ばします。先にサラダを食べていたテーブルに届いたSUSHIを見て驚きました。ヤマサの醤油(しかも減塩)、わさび、がり、そして箸まである。2週間ぶりに箸を使い1つを口に運ぶ。同時にルイ・アームストロングの"What a Wonderful World"が流れ始める。ああ素晴らしきかな、この世界。これは正真正銘に寿司でした。米も少し柔らかいものの、これまでで一番日本のお米に近い、幸せ。わさびをつけすぎて涙が。あれ、止まらない。


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今日で出発から2週間、頑張った自分へのご褒美。食費を削っていたこれまで、少し奮発した昼食。満腹感を得たのはこの食事が旅をはじめて最初だと思います。一気に元気になった僕は「日本人の俺からしても、この寿司は最高だよ」と料理を褒めちぎり、スキップで店を後にしました。僕の気持ちに合わせたように雨も上がり、見えてきた晴れ間。海外に来て疲れたら寿司を食べればいいとう発見を得ました。ラーメンまでも世界中で流行った日には、僕は世界のどこでも暮らしていける気がします。