なんてことのない日

ここザンビアでは日本製の車が大変多く走っています。それも日本では見かけなくなった一世代古い車種がここではまだ現役。車には全く詳しくない僕ですが「そういえばこんなのあったな」と、この街での散歩は少し懐かしい気分にさせられます。トヨタの車に乗っていたある運転手も「これは横浜で買ったんだ」と言っていたので、みなさんが前に乗っていた車は今もどこかで人を乗せているかもしれません。故郷では全く見ることのなくなった10年以上前に実家で使っていた車を探しすことに精を出しています。こんな海外の楽しみ方もあるんですね。


今日も当てもなく散歩をする。出発前におおよそのショッピングセンターの方向を頭に入れておき、地図も持たずに出かけます。ショッピングセンターとは少し懐かしい響きで、アフリカにあることを想像するのは難しいかもしれません。ザンビアの首都で一番栄えているここルサカでは大型商業施設が10分ほどのドライブで数個発見できます。僕が訪れたところはとても新しく清潔感もあり、映画館までついていました。この日も夕方まで雨が降っていたので、昼ごろまで宿でのんびり。さすがに手持ち無沙汰だったので、傘をささずに出かけました。迷ったらタクシーに宿の名前を言えば帰れるだろうという楽観。少しの現金だけ持ってほぼ手ぶら。ウルフルズが15曲流れたところで到着したから1時間ちょっと。好きな音楽を聴きながら歩くのが僕にとっては何よりのリフレッシュです。途中さらに雨脚が強くなったので木の下で雨宿り。雨に濡れるのは昔から好きですが、歳をとるにつれて日本では周りの目がすこし気になるように。ここならいいです、誰も僕のことを知らない世界。非常によくできたシステムだと思ったのは、アフリカでは道端で何かを売っている人がたくさんいて、各々「確かにたまに必要になる、これ」という物を首から下げたり、手に持ったりしています。雨が降るとどこからともなくレインコートを持った人が現れる。何気なく見ていたそれも、一生懸命さが伝わる光景でした。


この日の目的は本を買うこと。旅に際して大きな忘れ物もなく、我ながら立派だったと思いながら出発直前に選んだ本は失敗しました。もともとカバンに一冊は本が入ってないと安心できないタイプなのです。僕がここにいることの1つに、ある本の存在があるのですが、それはまたの機会に紹介します。いろいろ考えた挙句「長期間だし、普段はハードルが高くて読むことに時間がかかるものがいいかもしれない」と選んだのは「徒然草」と「ギリシア神話」。「徒然草」は角川ソフィア文庫の原文と現代語訳のついたもの。こちらはまだ読みやすく、時代と国を跨いでも今の感情にマッチした文章があったりと面白く、それなりに役立っています。岩波文庫の「ギリシア神話」は選んだ理由と完璧にマッチします。開始数ページで何十もの名前がでてくるこの本は難解で間違いなく読むことに時間はかかる。しかしアフリカのゲストハウスでプールを横に読むにはあまりに不似合いで、なかなかページが進みません。場所が変わればその趣も変わるのかもしれませんが、しばらくバックパックの中で眠っておいてもらおうと思います。お気に入りの小説を持って来ればよかったという後悔がありますが、どうしようもありません。ショッピングセンターには本屋もバッチリ入っていたので、そこで悩みながらマーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」の合本とチャールズ・ディケンズの「オリバー・ツイスト」を購入しました。もともと好きなトウェインの小説。少年時代に戻ったような気持ちになれるこの本と、教養小説の旗手であるディケンズの本と共に自分の成長を少しでも感じられたらと思います。もちろん英語版なので結局読むことに時間がかかることには変わりませんが旅を共にした小説は情景と相まって鮮明に心に残った経験があるので、ゆっくり読み進めていきたいと思います。


そのままスーパーに寄って食材を購入。夜は久しぶりに自炊しました。ザンビアで1人で料理を作っているのは、なんとも不思議な気分です。アボカドとトマトのスパゲッティをビールと一緒に食べながら満腹に。多くのゲストハウスには共用キッチンがあって、調味料なども自由に使え料理ができるようになっています。安上がりだし、自分好みの味にできるしでこれがまた良い。


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今滞在しているNatwange Backpackersは中心地から少し離れているため買い物などに行くには少し時間がかかりますが、細やかな気配りの行き届いた快適な場所です。どこも毎日よく掃除されていて不快感もありませんし、みなさんとても親切です。朝食がついていて、日本人の方に勧められたオムレツを毎朝いただいています。コーヒーとともにこれを食べてると、朝からなんと言えぬ幸せな気分です。とても美味しいので、作り方を教わって帰ろうと思います。犬に詳しくないので種類はわかりませんが、白いもふもふした中型犬がいて隙あらば僕の足元で寝ます。こいつがまたかわいくて、人肌恋しい僕は代わりに犬肌を撫でまくっています。8人部屋は日本人の方がチェックアウトされたので、1人で使っています。スペースがあるので心細くも得をしている気分です。またWi-Fiが強力でYouTubeの動画が再生できるほど。これは滅多にないことなとなので、すごくありがたい。iPodにいれそびれた今回の旅のテーマソング、奥田民生の「さすらい」を聴いて雰囲気を出します。僕は形から入るタイプです。ザンビアにお越しの際はここに宿泊することを強くオススメします。


といったように数日間はルサカで日本の一人暮らしとあまり変わらない日常を過ごしています。生きていく上で当たり前のことだけをして、アフリカにいるという事実だけが宙に浮いているような感じです。劇的さにはかけますが、たまにはこんな時間があると落ち着きます。手持ち無沙汰と言えばそれまでですが、せっかくなので英語の本と何度目かの禁煙にでもトライしようかなと思っています。